相続に備え資金造成
民法(相続法)改正により来年7月から遺留分減殺請求制度が大きく変わる。
遺留分とは相続人(兄弟姉妹を除く)が相続できる最低限の財産のことを言い、仮に遺言書に「Aには財産を一切相続させない」と書いていても、Aは遺留分減殺請求という手続きを通して、自身の法定相続分の半分に当たる財産を得ることができる。
現行の法律では、遺留分減殺請求に対して金銭で弁償(返還)するのか、それ以外の不動産などで弁償するのかをあらかじめ遺言書で指定、または請求を受けた側が決めることができるが、改正後は遺留分侵害額請求という名前に変わり、金銭でのみ弁償することになる。不動産が多く現金が少ないような場合は大きな問題となる。
例えば、これまでは「Aには財産を相続させない。遺留分減殺請求がなされたときは下記の順番で指定する」というような遺言書の書き方によって、手放しても良いような財産を遺留分に充てるという方法で、引き継いでいきたい大切な財産を守ることが可能であった。
民法改正後は金銭で応じなければならないため、現金が用意できない場合は大切な財産を売却して資金を作らなければならないような事態も起こりうる。
そういった事態を防ぐためにも、資産組み換えを行って遺留分侵害請求に対応できるだけの資金を作っておく必要がある。まずは収益性・流動性の低い不動産を処分して現金を作ること。そして、それでもなお資金が不足する場合は、その現金を運用して必要額にまで増やさなけばならないだろう。
その際に重要なのが目標設定だ。遺留分の備えとして必要な額、被相続人(親)の年齢や健康状態などから何年でいくら作る必要があるのかを考える。
例えば遺留分の備えとして1800万円必要で、処分した不動産が1千万円だったとして、残り800万円をあと10年で準備するとしたら、1千万円を6.05%で複利運用するれば必要額を準備することができる計算になる。一族にとって大切な価値のある財産を守り、次世代へと引き継いでいくことができる。
誰が資産運用するのかも重要なポイントだ。財産を持つ被相続人(親)がそのまま運用して財産を増やしていくこと結果的に相続財産そのものも増えることになり、遺留分の額も増えてしまう。以前紹介したように、相続時精算課税制度を使って、子供に財産を移転してから子供自身が運用して遺留分対策資金を作っていく方がこの場合は良いだろう。