融資厳格化に備えを
ここ数年、沖縄では不動産が年々高騰し、那覇市内では1坪700万円台での取引が行われたという話もあるほどだが、このまま上昇が続くのかどうか、関心の高い読者も多いことと思う。個人的な見解では、どうもそうはいかないと考えている。
今年の夏ごろからこの流れも折り返し始めた感があり、今まで以上に不動産の二極化がスピードを上げて進むと思われる。上昇は鈍くなり下落は加速する。そうすると収益物件の価格も下がり始める。
こういった動きを理解するために、なぜこの数年不動産相場が上昇を続け、収益物件の利回りも5~6%台になっていったのかを知る必要がある。
不動産の価格は買いたい人と売りたい人のバランスで決まっていく。買いたい人が多ければ不動産価格は上がり利回りは下がる。逆に売りたい人が多いと価格は下がり利回りは上がる。ここ数年は買いたい人が増えた時期だったということが言える。
大きな要因の一つとしてファイナンス(銀行)の影響がある。不動産はほとんどの場合、自己資金と銀行借り入れによって購入する。以前はある程度自己資金や担保力に余裕のある人しか不動産を買えなかったが、日銀のマイナス金利導入後から最近までは、今まで不動産を買うことが難しかった人でも借り入れがしやすくなっていた。買う人が増えたことで不動産価格が高くなったということだ。
しかしここに来て金融庁が銀行への引き締めを始めた。さまざまな問題が明るみに出る中、金融庁は融資の際により厳格に内容を精査するよう銀行に指示を出した。その影響もあり、少しずつではあるが不動産融資への審査が厳しくなってきている。また、貸出金利に上昇傾向も見られるようになってきた。
結果、融資がつかないことで買いたい人が不動産を買えない、売りたい人は売れない、市場に売れない不動産が増えていく、こういった流れで一気に不動産価格が下がっていく、今はまさにその一歩手前の状況にあると考えられる。
ここ数年の不動産価格上昇は相続税対策のアパート建築ラッシュ、収益物件の爆買い、観光立地への県外大手デベロッパーからの資金流入など実際にはさまざな要因があるが、やはりファイナンスの影響が大きいと言える。だからこそ、そのファイナンスが引き締めに入ると不動産市況の悪化への影響が懸念される。
不動産の所有者は、このような外的要因をいち早く的確に察知し、資産の組み替えによって優良資産の比率を高めることが重要だ。